[Review]: おいしいハンバーガーのこわい話

📅 公開: 2007-07-12

この本には、食品に加える香料の味見役をしている子たちや、牧場を守るために賢明に働くティーンエイジの女の子、家計を支えるために長い時間ファーストフード店で働く女の子、ファーストフードを食べすぎて胃のバイパス手術を受けた男の子など、さまざまな子どもの話が出てきます。みんな、ファーストフードが大きな力を持つようになったせいで、多かれ少なかれ影響を受けた子どもたちです。そんなファーストフードの代表格、ハンバーガーを発明したのが、ティーンエイジの少年だった、というのも興味深い話です。

『おいしいハンバーガーのこわい話』 エリック シュローサー あとがきより

『ファストフードが世界を食いつくす』 の著者がティーン向けに描いたファーストフード業界の書。イラストとは裏腹にブルっと身震いする内容が淡々と記述されている。目を引いた箇所をほんの少しけだけ列挙。

ファーストフードの食品の原料を知ると、「人工物」だと再認識できる。たとえばストロベリー・ミルクシェイクの原料は、

いちごのいらないストロベリー・ミルクシェイクであり、今やファーストフードの食品は白いカンバス。「人工物」を駆使して「絵」を描いていく。

食べものの匂いはときに、味の90%を決めることすらあり、科学者の一説によると、人間が味覚を持つようになったのは毒を避けるためだという。嗅覚を利用してにおいと記憶をむすびつけさせるため、試験管をにらみながら商品を開発している。マクドナルドがハッピーセットを配ってまで、子どもに来店してほしいのは将来の売上につながるから。子どものときに味覚が決定され、嗅覚によって記憶がよみがえり、「ファーストフードはおいしい」と安心感を与える。そして、その子どもたちの「色と匂いに対する味覚」が変わり始めた。

上記に列挙した内容は、本書の中身からすればセンセーショナルではない。あたりまえの事実が記されているだけであり、添加物や人工香料などに興味を持っている読者にすれば、周知の事実だろう。

むしろ、私はファーストフード業界が世界に与える「影響」に震撼した。今やアメリカ合衆国の権力者であっても抑えられないほど巨大化した企業。その巨人が食品に使用する牛や鳥をどのように飼育しているのか?

牛や鳥が飼育されている様子を読みながら、想像すると一気に食欲が失せた。さらに、

といった、世界中に均一化された食生活を持ち込み、世界中を食い尽くそうとする様が伺える。

反面、ファーストフード業界は貧困の地域に食と雇用を提供する役割を担ってきたことも否定できないと私は思う。だから、マクドナルドを議論するとき、何を論じるのか峻別しないと、単純に善悪の価値観に執着し、不毛な議論におわる。

ただ、特に子どもをもつ親御さんに読んでほしい。そして、想像してほしいと思う。今、目の前にあるハンバーガーとチキンナゲットとフライドポテトと清涼飲料水がどのような原材料から「造」られ、そして原材料はどのような環境で飼育されているのか。

いちばんはじめから目の前にやってくるまでをできるだけ想像し、その結果、想像によって描かれた「絵」に顔をしかめるのなら、今まで月に一度食べていたファーストフードを二ヶ月に一度、三ヶ月に一度にしてみてはどうだろうか。彼らに与える100円が私たちの一票なのだから。